2017/3 月のおすすめCD
ランチです。東京では桜が開花、春がやってまいりました。
DORINA “Dorina Canta Sambas de Aldir&Ouvir Ao Vivo”
レーベル:ROB DIGITAL
品 番:RD186
発表年:2016年
価 格:2,100円+税(ブラジル輸入盤)
買った店:ディスク・ユニオン・新宿本店4階ラテン・ブラジルフロアー
実力とか実績とは無関係に、なぜか印象の薄い人って、いますよね。
今回ご紹介するドリーナさん、デビューしてすでに20年になるベテランですが、日本ではなぜかあまり知られていないと思うのです。CDはコンスタントに出しているし、“Cidade do Samba”みたいなサンバ界の豪華スター共演企画にも結構呼ばれているのに、少なくとも私の周辺では、知名度ゼロに等しい。その原因は、オーソドックスなサンバを、オーソドックスに唄うという地味な芸風のせいか?はたまた、行きつけの居酒屋の人のいいおかみさん的外見のせいか?Rob Digitalなんていうマニア臭のするレーベルからCD出しているからか?抜群に歌のうまい人だけに、残念なことです。
本作は、ジョアン・ボスコの1975年の名曲「キッヂ・カヴァキーニョ」の作詞などで知られる名作詞家、アルヂール・ブランキが作詞した曲を取り上げたコンサートのライブ盤です。ジャケットをよく見ると、ブランキさんご本人がドリーナの右後ろにうっすらと、まるで心霊写真のように写っていて少し怖いです。その「キッヂ・カヴァキーニョ」は入っていませんが、「海のメストリ・サラ」と「酔っ払いと綱渡り芸人」はちゃんと取り上げられていますので、ジョアン・ボスコ好きの皆様はご安心ください。エリス・ヘジーナの重要なレパートリーでもあったこの2曲を聴くと、ドリーナの声がエリス・ヘジーナによく似ているという事に気づきます。
ドリーナを支えるバンドは、ギターが二人に小物パーカッションが一人だけというミニマルな編成ですが、これで充分、もう何も付け加える音はないほどの完璧な演奏です。ギター2本(うち1本は7弦)が紡ぎ出す音の万華鏡に、どっぷりとはまってください。
ラストの「酔っ払いと綱渡り芸人」が始まって、お客さんたちが自然に唄い出すのを聴いていると、やっぱりこの曲はブラジルの国民的な歌なんだな~、と感じます。軍事政権時代のブラジルで、悪政に苦しむ人々の心を支えるために生まれた歌。ブランキさん、素晴らしい人です。心霊写真なんて言って悪かった。
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